Mikako Hayashi-Husel

2022年2月4日8 分

ドイツ語作文(C1)の書き方

最終更新: 2022年3月1日

日本だけで通用するドイツ語検定試験、いわゆる「独検」にはなく、国際的に通用するゲーテインスティテュートのドイツ語検定試験にはある課題―それがドイツ語での作文です。

B2レベルは50分間で150語以上、C1レベルは65分間で200語以上、C2レベルでは60分間で約350語の作文を書く課題があります。

いずれも辞書なしで、課題で与えられたテーマについて適切な内容をどれだけまとまりのある文章で、また、どれだけ文法的な間違いをせずに書けるかで評価されます。

B2レベルではインターネットフォーラムへの投稿や教師・上司・同僚などへのメッセージなどが取り上げられることが多いため、「作文」と言える構造はまだ不要です。

このため、ここではC1レベルの作文を取り上げ、どのような点に注意すればいいのか、どのような表現を使いこなす必要があるのか、試験の傾向と対策などについてお話します。

ゲーテのC1試験の採点項目は、Inhalt(内容)4点、Textaufbau(文章構成)5点、Wortschatz(語彙)5点、Korrektheit(正しさ)6点の4つがあり、合計20点になります。文法的な正しさの配点がやや高くなっています。

これらの採点項目を1つずつ見ていきましょう。

Textaufbau 文章の構成

まず、何か書きだす前にきちんと考えなければならないのが文の構成です。

文章が全体的に論理的に構成されているかどうか、典型的な表現を使用しているかどうか、接続詞が適切に使用されているかどうか、といったことが採点基準です。

ドイツ語の作文は基本的に、Einleitung(導入部・序論)、Hauptteil(本論)、Schluss(結び・結論)の3部構成です。

導入部から結びに向かって一本の筋が通るように書きます。一般にドイツ語で「roter Faden(赤い糸)」と呼ばれる論理の筋道を読み手に明らかに認識できるようにする必要があります。

典型的な構成は、導入部で問題提起し、本文でその問題についての議論を展開し(賛否両論を述べ、自説を展開)、最後に展開した論を回収して結論を述べる形式です。

もう一つよくある構成は、導入部で先に結論を命題のように提示し、本文でその論拠を述べ、結びでもう一度結論を繰り返すパターンです。

  • 問題提起⇒議論展開⇒結論

  • 結論・命題⇒論拠・議論展開⇒結論

この2つのパターンを文章の骨格として常に意識するようにしましょう。

接続詞の使用はテクニカルな細かい問題なので、語彙のところでまとめて論じます。これは語彙力の問題でもあるからです。

Inhalt 内容

次に「内容」ですが、これはとりあえず具体例を見ていただくのがベストでしょう。

これはゲーテのC1試験に出題された過去問の例です。

実家から出ている独身の学生の生活の収支に関する2006年の統計データが提示されています。

この課題は、学生の収入源と支出について報告し、それについての自分の意見を述べることです。

「内容」の項目で注意すべき点は、「Gehen Sie bei Ihrer Ausarbeitung auf folgende Punkte ein:」以下に示されている5つのポイントです。

作文の中で5つ全てが考慮されていれば満点の4点がもらえます。4つだけなら3点、3つだけなら2点、1つか2つだけだったり、言及が短すぎる場合は0.5~1点、全く考慮されていなければ0点になります。

ここでは、考慮するべきポイントは以下の5つです。

  1. Studentische Geldquellen

  2. Studentische Ausgaben

  3. Situation in Ihrer Heimat

  4. Auswirkungen der Finanzen auf das Studium

  5. Tipps, die Sie Studenten geben können, um Kosten zu reduzieren.

このうち1と2は統計から読み取れますが、3~5は自分で考えなければなりません。

真っ先に決めるべきことは、自分の「結論」を何にするかです。結論部に持って行くのに相応しい内容は5でしょう。

コストを抑えるためにどんなアドバイスがあるか考えてみましょう。

この際に、4の「経済状況の大学の勉強へ与える影響」というポイントとのつながりを考えます。

時間制限がありますから、そんなに込み入ったことを考える必要はありません。一般論で十分です。

例えば、上の統計では100人中90人が両親からの仕送りを受け、100人中60人がアルバイトなどで収入を得ています。つまり、100人中30人は仕送りだけで生活していると解釈できます。この人たちはバイトしなくていい分、勉強に回せる時間が多いと言えます(実際に勉強してるのかどうかは置いておくとして)。バイトしなければ生活できない学生は、その分勉強に回せる時間が少ないので、場合によっては大学を修了するまでにより多くの年月がかかることでしょう。

なるべく短い期間で大学修了することがベストだとすれば、できる限りバイトに割く時間を減らす、つまり生活費の節約をする必要があります。

この後に、5のコスト節約のアドバイスにつなげていくことができます。

結論部が決まったら、そこに読者を導くためにどんな導入がいいのか考えます。

私の例ですと、お金を稼ぐことと勉強時間の兼ね合いを扱うので、「Geldverdienen und Studieren: Wie kann man beides unter einen Hut bringen?」のような問題提起で始めてみてもいいでしょう。

あまりうまい導入部が思いつかない場合は、課題文をちょっとアレンジするだけでもいいです。

例:Ich möchte darüber berichten, wie Studenten ihr Studium finanzieren, welches Einkommen und welche Ausgaben sie haben, und dazu Stellung nehmen.


 
実に退屈な導入ですが、何もなしでいきなり統計の説明に入るよりはポイントが高いです。

1と2については、それぞれ上位3位の項目を述べておけば十分です。

3については、ドイツと日本の共通点と相違点をそれぞれ一つずつ挙げておけばいいでしょう。正確な統計などは試験の際には調べることができないので、知っていることを簡潔に述べます。

作文の練習では実際の統計を調べてきちんと両国を比較対照することをお勧めします。

4のポイントを、「経済状況によって大学の勉強に影響が出てくることは両国共通」というように3と4を流れるようにつなげるのもいいでしょう。

その後に5のコスト節約のアドバイスを述べて終わりにするのもいいですし、「これこれのアドバイスはできるが、自分はそもそもこう思う。」のような自論で締めてもいいと思います。

Wortschatz 語彙

ここでは適切な言葉が選択されているかどうか、同じ言葉の繰り返しを避けるために言葉の言い換えが行えるかどうか、慣用句が使いこなせているかどうか、といった観点から採点されます。

語彙の多さをデモンストレーションするために、よく分かっていない単語を使うのはお勧めしません。試験本番では確実に理解して使える単語(課題の中ですでに使われている単語など)のみを使うのが安全です。

語彙・表現での冒険は練習の時だけにしてください。

文章が理解不能であれば0点になります。多少語彙の問題があるにせよ、理解できる文章であれば3点、語彙力がかなり高く、正しい単語が使われていれば満点の5点がもらえます。

ここで、文章構成の際に特に注目される接続詞について説明します。

順接の und 逆接の aber だけでは論理的な文章は作れません。

従属接続詞の weil, indem, dadurch dass, damit, so dass, obwohl などを使って、主文+副文を常に作る必要はありません。短い主文を論理的に繋げるための接続詞も数多くありますので、主文+副文、主文+主文の組み合わせをバランスよく使えるようにしましょう。

論理展開の際に重要な接続パターンをいくつか以下に挙げます。

原因・理由

主文 weil/da 副文

主文, denn 主文

主文. Daher/Deshalb/Aus diesem Grund +主文(動詞+主語!!!)

結果・目的

主文 damit/so dass 副文

主文. Damit/Somit/Demzufolge/Folglich +主文(動詞+主語!!!)

主文. 主語+動詞 + damit/somit/folglich ...

主文, um zu 不定詞句

対比

Während 副文, +主文(動詞+主語!!!)

Einerseits 主文(動詞+主語!!!), andererseits 主文(動詞+主語!!!)

Auf der einen Seite 主文(動詞+主語!!!), auf der anderen Seite 主文(動詞+主語!!!)

A (主文). B hingegen 動詞...

比較

A wie B (副文)

je 比較級(副文), desto 比較級 (主文:動詞+主語!!!)

条件

主文, wenn/falls/solange/sofern 副文

Vorausgesetzt, dass 副文, so 主文(動詞+主語!!!)

動詞+主語 ..., 主文 (例:Sollte es regnen, bleibe ich zu Hause.)

認容

obwohl/obgleich/auch wenn 副文

A (主文). Trotzdem/Dennoch 主文(動詞+主語!!!)

主文. 主語+動詞 + trotzdem/dennoch ...

文章構成に典型的な表現を以下にいくつかご紹介します。

Einleitung 導入部・序論

Das Thema ... ist ein Problem/Thema, das erst seit wenigen Jahren aktuell ist

..., das schon lange diskutiert wird

..., mit dem man sich unbedingt beschäftigen sollte

..., das vor allem für ... von großer Wichtigkeit/sehr wichtig ist.

Es ist allgemein bekannt, dass ...

Bekannt ist bisher nur, dass ...

In der Öffentlichkeit herrscht die Meinung, dass ...

Erst kürzlich stand in der Zeitung, dass ...

Noch vor wenigen Jahren .../Bereits früher ...

Wenn wir zurückblicken/die Entwicklung der letzten Jahre betrachten ...

Hauptteil 本論

... spricht daführ/dagegen.

Die Situation ist doch folgende ...

Dazu kommt noch ...

Man sollte nicht vergessen, dass ...

Ein weteres Beispiel wäre ...

Meinen Erfahrungen nach ...

Meiner Ansicht nach ...

... bin ich mit ... nicht/ganz einer Meinung.

Diese Ansicht kann ich nicht tielen.

Als Gegenargument lässt sich hier anführen, dass ...

Ich schlage vor, dass ...

Vielleicht sollte man ...

Eine mögliche Lösung/Alternative wäre ...

Schlussteil 結論

Zusammenfassend kann man feststellen/sagen, dass ...

Daraus ergibt sich die Schulssfolgerung, dass ...

Die Konsequenzen daraus sind ...

Für die Zukunft könnte das ... bedeuten/heißen, dass ...

Korrektheit 正しさ

文法的な正しさは言うまでもないことだと思いますが、間違いがゼロでないと満点の6点取れないというわけではありません。

日本語の文章で「てにをは」が1つや2つ間違ってる箇所があっても「あ、間違ってるな」と気づく程度で理解に問題にならないように、ドイツ語でも dem とするべきところで den と書いてしまったなどの些細な間違いが1・2カ所あっても問題になりません。

多少の間違いがあっても文章理解に問題が生じないのであれば、間違いの数によって4~5点はもらえます。

文章が間違いによって部分的に理解しにくくなる場合は3点、間違いが多くてしばしば理解の妨げになる場合は1~2点、間違いが多すぎて理解不能な文章は0点となります。

名詞・形容詞・動詞の活用、動詞や前置詞の格支配などの基本をきちんと押さえるばかりでなく、語順(特に動詞の位置)にも気を配りましょう。

以上、ゲーテのC1試験における書く部門の採点項目を1つずつ見てきました。

これで、原則的なことはお分かりになったことと思います。

後は、練習あるのみです。

具体的な対策・勉強法としては、ドイツ語を書きだす前に「序論・本論・結論」の3部構成で考える癖をつけることをお勧めします。

また、少なくとも「Wortschatz 語彙」の章で挙げた具体的な接続詞や表現をスラスラと書けるように、これらを使った文をたくさん作りましょう。

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