単語を暗記しても会話や作文で使えない、読むことができても話せないのなぜ?
更新日:2月28日

ドイツ語学習に限らず、外国語学習一般に言えることですが、長いこと外国語を学ぶ上では単語の暗記が不可欠であると考えられてきました。そのため、私たちの多くは単語カードや単語帳を作り、せっせと暗記し、単語テストに精を出してきました。
ところが、近年の認知言語学や外国語習得論の研究では、人間の脳が暗記した単語を文法規則に当てはめて、言語を理解(聞く・読む)して表出(話す・書く)しているわけではないことが分かってきています。
つまり、どれほど時間を費やして単語の暗記をしても、学習成果として、言語素材への対応能力や運用能力が保証されることはかなり疑問です。これは学習者自身の経験からも、納得のいくものでしょう。
言語知識として定着する表現能力は、運用(聞く・話す・読む・書く)の中で繰り返し接触した結果、比較的偶発的に身についていくことが分かっています。
また、「読むことができても話せない」と嘆く人も多いですが、これも実は、単語帳・文法・読解に重きを置いた学習方法の当然の結果なのです。ことばはいわゆる四技能〈聞く・話す・読む・書く〉で構成されていますが、これらは、それぞれが別個の脳機能によって支えられているため、一つの技能を獲得した結果、自動的に他の技能にも習熟できるというものではないのです。つまり、話す技能は話す練習をすることによってしか鍛えられないので、その練習をせずに単語を覚え、テキストを読み込んできた学習者が離せないのは当たり前なわけですね。
さらに、文字(読む・書く)と音声(聞く・読む)でも担当する脳内基盤が異なっています。理解する(聞く・読む)ときに活性化される脳内の表現形式(受容語彙)と表現する(話す・書く)ときにアクセスする脳内の表現形式(発表語彙)も異なっており、それぞれが別の記憶体系に貯蔵されているため、聴解を繰り返すことによって話したり書いたりといった表現力を鍛えることが困難なのです。
これらの科学的な知見を踏まえて、自分の学習方法を再考してみましょう!
本来は、最初から四技能、特に聞く・話す・読むの三つをバランスよく鍛えていくのが理想的なのですが、恐らくこれを読んでいる皆さんは、英語なりドイツ語なりを辞書があればテキストを理解でき、音声もその言語での字幕や書き起こし文があれば理解できる状態に達していることでしょう。つまり、受動的な能力のみをある程度獲得している段階で、能動的に話すあるいは書くという能力がほとんど鍛えられていない状態なのではないでしょうか。
これを改善するには、発話と作文を徹底的に練習するしかありません。特に発話はワーキングメモリーをフルに使い、発言内容を整理して一定時間内に出力する必要があるため、文法規則や熟語・慣用句を含めた語彙などが〈自動化〉されていないと、かなりボロボロで支離滅裂なものとなってしまいます。一方、作文であれば、こうした自動化が不完全であっても時間さえかけて調べれば何とかそれなりのモノは完成させられます。
そこで、私のお勧めする訓練方法は以下のとおりです。
日頃から読んだり聞いたりする時に「理解できる」だけで満足せず、正確な言い回し・慣用句をピックアップし、自分で使えるようにするために、見本を参考にそれを使った例文を作って暗唱する。
ニュース記事などのある程度まとまった外国語テキストを読み、自分の言葉(外国語)でまとめる。
あるいは、自分の日頃の行動や思ったこと感じたことを日記に書く。
そのように書いたものが正しいかどうかネイティブチェックしてもらう。
直してもらった文を暗唱する。
この訓練を繰り返し行うことで、自動化されていくものが増え、発話する際にスムーズに取り出すことができるようになります。
ここで一番大切なのは、ステップ5の暗唱です。これは顔・口・舌の筋トレしているようなものですが、同時に音声を発しているので、聴解能力も鍛えられるのです。
私の提供するニュースコースや日記コースは2~4のステップをサポートするコースです。ぜひ、お試しください。
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