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執筆者の写真Mikako Hayashi-Husel

Redewendungen der Woche 今週のドイツ語慣用句 KW08/2021

今週(2021年第8週)にFBのページTwitterまたはNoteでご紹介した「Redewendung des Tages 今日のドイツ語慣用句」をまとめてご紹介します。


1.von Angesicht zu Angesicht


意味: 面と向かって 字義通りには「顔から顔へ」


例文: Es ist keine gute Idee, die Beziehung via SMS zu beenden. Stattdessen sollte man Frau oder Mann genug sein, dem Partner von Angesicht zu Angesicht gegenüberzutreten.(訳例:人間関係を携帯のショートメッセージで終わらすのはいただけない。パートナーに面と向かって対峙するだけの大人の度量を持つべきだ)


Es war ein beklemmendes Gefühl, dem Direktor von Angesicht zu Angesicht gegenüberzustehen.(訳例:ディレクターに直接対面するのは畏れ多い感じだった)


解説: Angesicht は、先述のように本来は「見る」という意味でしたが、「顔」を意味する雅語です。「かんばせ」という感じでしょうか。 「von Angesicht zu Angesicht」は、少し改まった雰囲気を漂わせはしますが、決して古めかしいとかいうことはなく、使用頻度は割と高いと言えます。ドイツ語の別の単語一語に言い換えると、「persönlich」になります。


2.jemand / etwas hat es jemandem angetan


意味: 人/ものが~を魅了してしまっている、~の気に入る


例文:

Ihre milden und tiefgründigen Augen haben es dem Jungen sehr angetan.(訳例:彼女の優しく深みのある瞳が少年をすっかり魅了してしまっている)


Karge Landschaften haben es mir angetan, nicht nur die Landschaften an sich, sondern auch die Umstände, unter denen man dort lebt.(訳例:荒涼とした風景が気に入ったの。風景それ自体だけじゃなくて、そこで生きるという状況もね)


解説: この慣用句は「口語的表現」に分類されています。antun という動詞は tun(する)という動詞の派生形で、本来は「何かをくっつける」、特に Zauberspruch(魔法の呪文)を人に対して使うことを意味していました。その呪文が悪いものであれば、jemandem etwas antun という慣用句に見られるように「人に危害を加える」ことになりますが、呪文がチャームのようなものであれば、「人を魅了する」ことになりますね。一種の魔法です。だから、人を魅了することを verzaubern とも表現するわけです。 es jemandem angetan haben の「es」は明言はしてませんが、このようなチャームを暗示するものだと考えられます。なので、使う時は絶対にこの「es」を忘れないようにしましょう。


3.von ... angetan sein


意味: ~に魅せられている、ほれ込んでいる


例文: Er war im Allgemeinen von seinen eigenen Kindern nur wenig angetan.(訳例:彼はそもそも自分の子どもたちにほとんど関心がなかった)


Birgit und Sofie sehen sich an, sie schmunzeln und beiden wird klar, dass sie von Rolf angetan sind, dass sie, wenn nötig, um ihn kämpfen werden.(訳例:ビルギットとソフィーは見つめ合い、薄笑いを浮かべる。二人ともロルフに夢中で、必要とあれば彼を巡って争うことになるのを了解する)


解説: 先日ご紹介した「es jemandem angetan haben ~を魅了してしまっている」の受動態バージョンです。とはいえ、文法的に正確な受動態変換ではありません。なぜなら、ドイツ語では通常、jemandem(Dativ 与格)を主語にする受動態は作れず、jemandem(Dativ 与格)がそのまま 第一ポジションに移動して、動詞だけが受動態になるからです(例:man sagte mir --> mir wurde gesagt)。上述の慣用句ではこの jemandem の部分が主格に変わっていますので、意味的な対応はあるものの、直接的な派生関係にはないと言えます。


4.etwas in Angriff nehmen


意味: ~に着手する、取り組む


例文: Die Regierung versprach, die Reformen in Angriff zu nehmen.(訳例:政府は改革に着手すると約束した)


Die Sanierung des maroden Unternehmens kann nun endlich in Angriff genommen werden.(訳例:すっかり疲弊した会社の立て直しに取り組むことが今ようやく可能となった)


解説: この慣用句はかなり使用頻度の高いものですが、Angriff / angreifen を「攻撃/攻撃する」としか覚えていないと戸惑ってしまう言い回しであることも確かです。 angreifen が「手を付ける」のような意味で使われることは非常に稀です。その意味で使われる動詞は現代の口語では anpacken が普通です。 「etwas in Angriff nehmen」という表現が成立した頃は、angreifen が「攻撃する」という意味に特化せずに、「手を付ける、取り組む」という greifen(掴む)のニュアンスがまだ一般的だったのでしょう。 それにしても、ドイツ語でも日本語でも共通して「手を付ける」ことが何かを「始める」ことを意味するのは興味深いですね。

ちなみに、この慣用句では定冠詞がないことにご注意ください。「定冠詞か不定冠詞のどちらかを必ずつけていれば8~9割は正解」という大雑把冠詞ルールに当てはまらない1~2割に属する一例です。


5.jemandem wird/ist angst und bange


意味: 心配になる/である、恐ろしくなる/恐ろしい


例文: Als er mit Vollgas die Kurve ansteuerte, wurde mir angst und bange.(訳例:彼がフルスピードでカーブに向かって行った時、私は恐ろしくなった)


Mir ist schon angst und bange, wenn ich nur an die Prüfung von morgen denke.(訳例:明日の試験のことを考えるだけで、もう不安でいっぱい)


解説: この慣用句は同じ意味の単語を並べるタイプの Zwillingformel 双子形式です。 angst も bange も同じ語源で、eng(狭い、きつい)の派生形です。元は狭いところに追い詰められたり、不安や恐怖で心臓がきゅうっと締め付けられたりしたときの状態を表す表現だったようです。 wird(なる)/ist(である)の動詞とともに使われる場合は、angst と bange は形容詞扱いで、小文字で書かれるのですが、使役を表す machen とともに使われる場合は、新正書法では「jemandem Angst und Bange machen」と大文字で書かれます。旧正書法では小文字でしたので、現在でも小文字で書く人は多いですが、子どもたちは学校で大文字で書くと教わっているはずです。その妥当性についての議論はここでは割愛させていただきます。


6.jemandem sitzt die Angst im Nacken


意味: 大きな恐怖を抱いている。 字義通りには「誰かには、不安・恐怖が首筋に居座っている」

例文: Kleine Schweißperlen auf seiner Stirn zeigten, wie sehr ihm die Angst im Nacken saß.(訳例:額に浮かぶ玉の汗が、いかに彼の恐怖が大きいかを示していた)

Auch hier gibt es Todespisten, die Autofahrern bei jedem Kilometer die Angst im Nacken sitzen lässt.(訳例:ここにも死のコースがあり、1キロメートルも気を抜けない恐怖の的だ)

解説: Nakcen 首筋というのは、頭に近いことから、昔から悪魔の住処と信じられてきた経緯があります。その迷信をもとに様々なものが「sitzt im Nacken 首筋に居座っている」または何か・誰かを「im Nacken haben 首筋に持っている」という慣用句が生まれました。そのうちの1つが今回ご紹介する die Angst です。 悪魔に首根っこを掴まれているという本来のイメージを思い浮かべれば、この慣用句に含まれるその恐怖の程がうかがえるのではないでしょうか。


7.es mit der Angst zu tun bekommen

意味: 怖くなる、不安になる 字義通りには「(漠然とした状況が)不安と関係を持つようになる」

例文: Viele Menschen bekamen es mit der Angst zu tun, als es bekannt wurde, dass die neue britische Coronavirus-Variante viel ansteckender sei.(訳例:新型コロナウイルスのイギリス型変異株が感染力がより強力であることが明らかになったとき、多くの人たちは不安になった)

解説: この慣用句は少々回りくどい言い方ですが、Angst bekommen という言い回しと意味的な違いは基本的にありません。人によっては微妙な使い分けをしていることがあるかもしれませんが。 「es」は漠然とした状況を表し、この慣用句では必須要素ですので省略は不可です。 文法的に類似したものに「es mit jemandem zu tun bekommen ある人といやな・まずい・やばいことになる」というのがあります。



以上が今週、FBのページTwitterまたはNoteで毎日1つずつご紹介していった慣用句のまとめと補足です。1日1つずつの方がよいという方は、FBのページTwitterまたはNoteをぜひフォローしてください。

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