今回のテーマは東西ドイツの所得格差に関する最新の統計(2019)についてです。出典は、ドイツ連邦統計局のサイト Statistaです。
まずは初級者向けに数字の動きを表す簡単なドイツ語表現をご紹介し、その簡単な語彙を使ってグラフの説明をする独作文の例を示します。
その後に、初級レベルは抜け出しているドイツ語学習者向けに、Statistaにある説明の原文をご紹介し、簡単に解説します。
数字の動きを表す簡単なドイツ語表現
「数値が上昇する・増加する」を表す動詞は、steigen, zunehmen が一般的です。
「数値が下降する・下落する・減少する」を表す動詞としては、sinken, abnehmen が先にあげた動詞の反意語として挙げられます。
数値の動きの起点・着地点および差分を表すには次の前置詞を使います。
von ~から(起点)
auf ~に(着地点)
um ~(分)増加・減少して(差分・デルタを表す)
最後の前置詞 um が単独ではやや説明しづらいのですが、次の基本例文を見て、全体として理解してください。
Die Mitgliederzahl ist um 30 von 100 auf 130 (von 100 um 30 auf 130) gestiegen.
メンバー数は30人増加して、100人から130人になった。
Der Aktienkurs ist um 2% von 100 auf 98 EUR gesunken.
株価は2%減少し、100ユーロから98ユーロになった。
um ~は、ただの差分である場合は最初、または起点の後に来ることができます。パーセンテージを表す場合は、最初に来るのが一般的です。いずれの場合でも、着地点の後に来ることはまずありません。
数字の動きの報告で覚えておいた方がいい表現はあと2種類あります。
「~は(数値)である」という場合、sein よりも、(数値)betragen という動詞を使うことが多いです。bei(数値)liegen という表現も頻繁に使われます。
「変化がない」ことを表す表現には、gleich bleiben, unverändert bleiben(または sein)があります。
東西ドイツの所得格差最新統計を簡単なドイツ語で説明
いよいよ本物の統計データの登場です。下が東西ドイツの平均月収(総支給額)の1996~2019年の間の変化を表したものです。
まずはご自分で上のドイツ語表現を使って説明できるかどうか試してみてください。
簡単なドイツ語での説明例:
Diese Grafik zeigt die Entwicklung des Bruttodurchschnittslohns pro Monat in West- und Ostdeutschland zwischen 1996 und 2019.(まずグラフが何を示しているかを説明。大抵の場合グラフのタイトルをそのまま使用できます)
Der Bruttodurchschnittslohn pro Monat in Westdeutschland stieg von 2.350 EUR in 1996 um 990 EUR auf 3.340 EUR in 2019.
Der Bruttodurchschnittslohn pro Monat in Ostdeutschland stieg im gleichen Zeitraum von 1.820 EUR um 1.030 EUR auf 2.850 EUR.
Obwohl der Bruttodurchschnittslohn pro Monat in Ostdeutschland mehr stieg als in Westdeutschland, blieb die Differenz zwischen Ost und West immer noch sehr groß.
Statista の説明原文
Auch 30 Jahre nach der deutschen Wiedervereinigung besteht zwischen den alten und den neuen Ländern noch keine Chancengleichheit. Das zeigt sich unter anderem beim Gehalt, das laut einem Bericht dem Bundesministerium für Wirtschaft und Energie (BMWi) im Westen noch immer höher ist als im Osten.
Zwar hat sich die Lohnlücke in den letzten fünf Jahren tendenziell zu schließen begonnen. Der Lohnabstand von Ostdeutschland zu Westdeutschland betrug zuletzt nur noch 15 Prozent, fünf Jahre zuvor hatte er noch 22 Prozent betragen. Wie die Statista-Grafik zeigt, ist der Gehaltsunterschied aber noch immer eklatant: In Westdeutschland lag das monatliche Bruttodurchschnittsgehalt im Jahr 2019 über alle Branchen und Betriebsgrößenklassen hinweg bei 3.340 Euro. In den neuen Ländern verdienten Arbeitnehmer dagegen im Schnitt nur 2.850 Euro brutto im Monat.
Bundesweit verdienten Fach- und Führungskräfte am meisten Gehalt in Hessen, gefolgt von Baden-Württemberg und Bayern, wie auch eine StepStone-Studie aus dem Jahr 2019 zeigt. Den Schlusslicht beim Gehalt bilden die neuen Länder Sachsen, Sachsen-Anhalt und Mecklenburg-Vorpommern.
解説
zwischen den alten und den neuen Ländern: 「古い州」とは旧西ドイツの州のことで、「新しい州」は東西ドイツ統一によって新たにドイツ連邦共和国に加わった州、すなわち旧東独のメクレンブルク・フォアポンメルン州、ブランデンブルク州、ザクセン州、ザクセン・アンハルト州、チューリンゲン州の5州を指します。ベルリンは東西に分断されていたため、半分は西ドイツに属していたので、「新しい州」にはカウントされません。
Bundesministerium für Wirtschaft und Energie(BMWi): 連邦経済エネルギー省。dem Bundesministerium とあるのは、des Bundesministeriums の誤り。元は laut dem Bundesministerium であったところに後から einem Bericht を挿入したのに、修正を完全にしなかったことによります。
die Lohnlücke/der Lohnabstand: 給料ギャップ。「埋めるべきギャップ」というニュアンスが強い。
Zwar ...: 通常は、zwar があれば、「,(コンマ)」で区切られた次の文に aber が来るものですが、ここでは一度ピリオドで文が区切られ、さらに1文挿入された後にようやく aber が来ています。あまりいい文体とは言えませんが、「確かに~であるが」の意味で呼応する逆接の接続詞または副詞が来るまでに間が開くことも書き言葉では可能です。
... hat sich ... zu schließen begonnen: 不定詞句 sich zu schließen が主文の中に埋め込まれているので分かりにくいかもしれません。「sich zu schließen 閉じること」が「hat begonnen 始まった」という構造です。
der Gehaltsunterschied: 給料格差。先の Lohnlücke ほど「埋めるべき」というニュアンスがありません。客観的な「差・違い」を表します。
das monatliche Bruttodurchschnittsgehalt: グラフの見出しになっているBruttodurchschnittslohn pro Monat に同じ。所得税・社会保険料を差し引く前の給料総額を指しています。
über alle Branchen und Betriebsgrößenklassen hinweg: 全業種・企業規模を超えて
Fach- und Führungskräfte: = Fachkräfte und Führungskräfte 専門職(熟練労働者)と管理職
den Schlusslicht bilden: das Schlusslicht bilden の誤り。「どんじりである」の意。
翻訳
私の翻訳を見る前に、ご自分で翻訳を試みる必要はありませんが、まずは上の解説を見ながら大意を掴むようにしてください。
ドイツ統一から30年経過してもいまだに旧東西ドイツの間には機会の平等がない。そのことは、連邦経済エネルギー省の報告にあるように、いまだに西側の方が東側よりも高い給料に現れている。
確かに、東ドイツと西ドイツの給料ギャップは過去5年で閉じていく傾向が見られ始めている。東ドイツの給料の西ドイツのそれとの差は、15%しかなくなってきていた。それ以前にはまだ22%の差があったのだ。Statistaのグラフが示すように、それでも給料格差はいまだに明白である。西ドイツでは2019年の全業種・企業規模の平均月給(総額)が3,340ユーロであったのに対して、東ドイツのサラリーマン月給(総額)は平均で2,850ユーロだけだった。StepStoneの2019年の調査でも、全国で最も専門職・管理職の給料が高いのはヘッセン州で、それにバーデン・ヴュルテンブエルク州とバイエルン州が続き、東ドイツのザクセン州、ザクセン・アンハルト州、メクレンブルク・フォアポンメルン州は最下位を占めている。
以上翻訳。
東西の給料格差はいろいろと言われはしますが、実際には家賃の相場や生活必需品の物価にも違いがあるので、可処分所得を基準に生活水準を比較した場合、給料額面の違いから受ける印象ほど格差があるわけではないです。
動画版はこちら。
目次:
2:30 数字の動きを表す簡単なドイツ語表現
9:50 東西ドイツの所得格差最新統計を簡単なドイツ語で説明
12:23 Statista の説明原文
15:00 原文の解説
24:11 翻訳例
26:00 コメント
サイト会員になると無料メルマガ「Mikakoのドイツ語通信」とブログの更新情報の通知をお受け取りになれます。ぜひご登録ください!
Comments