現代ドイツ語では、だんだん Genitiv(2格、属格)が追い詰められています。若い人には「古臭い」イメージを持たれているようです。
特に口語では絶滅危惧種になりつつあるのです。
ドイツ語の古いヒット曲(1986)に「Wegen dir(君のために)」というのがあります。この言い方は実はバイエルン方言では正しいのですが、Hochdeutsch では wegen dir でも wegen deiner でもなく、deinetwegen と言います。
ただ、こういうヒット曲があったために wegen dir という言い方が本来の方言圏を越えて有名になってしまい、少なくとも口語では市民権を得てしまったと言わざるを得ません。
meinetwegen, deinetwegen, seinetwegen, ihretwegen, euretwegen, unseretwegen をぜひ使ってください。「~のために、~のせいで」を表す便利な表現ですよ。お勧めです!(笑)
もっともこれらの -et が属格なのかどうかについては議論がありますが。
みなさんにはぜひ、以下の2格支配の前置詞を正しく使用して、絶滅危惧種の格を救ってください(笑)
1)angesichts(…を目の前にして、…に直面して): angesichts des dichten Verkehrs(混雑した交通状況に直面して)、angesichts der Tatsache(その事実にかんがみて)
2)aufgrund/auf Grund(…に基づいて、…の理由で): aufgrund schlechten Wetters(天気が悪いため)、aufgrund falscher Vorhersagen(予報が間違っていたため)
3)dank(…のおかげで): dank seines guten Rufs(彼のいい評判のおかげで)
4)einschließlich(…を含めて、…込みで): einschließlich seines Vermögens(彼の財産込みで)
5)infolge(…の結果として,…のために): infolge dichten Nebels(濃い霧のために)
6)innerhalb(~内で)/außerhalb(~外で): innerhalb des Geländes(敷地内で)、außerhalb der Öffnungszeiten(営業時間外で)
7)kraft(…に基づき): kraft seines Amtes(彼の役職に基づき)
8)mittels(…を用いて、…によって): mittels eines Zauberspruchs(呪文を用いて)
9)namens(…の名のもとに): namens des Vereins(協会の名のもとに)
10)seitens(…の側で): seitens des Urhebers(著作権所有者側で)
11)statt(…の代わりに): statt des Vaters kam der Sohn.(父親の代わりに息子が来た)
12)trotz(…にもかかわらず): trotz des schlechten Wetters(悪天候にもかかわらず)、trotz aller Warnungen(あらゆる警告にもかかわらず)
13)unweit(…から遠くないところで): unweit des Dorfes(村から遠くないところで)
14)während(…の間に): während des Krieges(戦争中に)
15)wegen(…のために、…の理由で): wegen des schlechten Wetters verschoben(悪天候のために延期された)
16)zufolge(稀、…によれば): zufolge des Berichtes(報告によれば)。後置される場合は3格支配:dem Bericht zufolge
aufgrund / infolge / innerhalb / außerhalb は von を伴って使われることが多くなっています。この場合は Dativ(3格、与格)支配となります。
einschließlich / trotz / wegen では、形容詞や冠詞を伴わない名詞は2格の代わりに格変化語尾のない3格となることがあります。
例:einschließlich Porto(s), trotz Regen(s), wegen Mord(es)
laut は、冠詞・形容詞のない名詞の場合には必ず3格支配になります。
例:laut eines Zeitungsberichtes(ある新聞の報告によれば)<-> laut Zeitungsbericht (新聞の報告によれば)
これを laut Zeitungsberichtes としてしまうと、行き過ぎた正しさ、とでもいうのでしょうか、Hyperkorrektismus と呼ばれる間違いの一種となります。
こういう奇妙な例外があるからややこしいですね。何かこれといった規則があればいいのですが、残念ながら個別に覚える以外にはありません。
でも、迷いが生じても落ち込む必要はありません。ドイツ語を母語とする人たちも迷い、時に間違うのですから(笑)
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