top of page

技術ドイツ語~ねじ

今回はねじについての投稿です。


ねじは、興味のない人間には「ねじはねじでしょ」で終わってしまうものですが(技術系の方、すみません😅)、ちょっと詳しく見ると、そこに含まれる様々な技術や物理学的計算の量に圧倒され、すぐに「失礼しました~」と逃げたくなるような世界が広がっています。

でもドイツ語の産業翻訳をやっているとこういう世界と無縁でい続けることが不可能なので、門外漢ながら多少この分野に足を踏み入れ、ある程度まとまった豆知識を皆さんと共有したいと思います。技術系の方は、不適切な日本語の表現などを指摘していただければありがたいです。

さて、「ねじ」というとドイツ語では通常は die Schraube で、「ねじを締める」は eine Schraube anziehen、ねじを締めるのに必要な道具「(スクリュー)ドライバー」は der Schraubendreher (Schraubenzieherという言い方もありますが、ねじを「引っ張るもの」を意味するため、不正確と言われています)です。特にDIY的なこだわりがなければ、これらの単語だけでたぶん事足ります。

もうちょっと語彙を広げると、「ナット」die Mutter(「お母さん」じゃない)、「レンチ・スパナ」der Schlüssel(「カギ」じゃない)、「あわせくぎ」der Dübel などと言う一般名称があります。

さらに、技術的な素養がなく、辞書だけを見ると違いがよく分からず混乱する単語に die Gewinde 「ねじ」と der Bolzen 「ボルト」があります。

よくお目にかかる die Sechskantschraube「六角ボルト」はどう見てもねじなのに、日本語では「ボルト」で、ドイツ語ではBolzen とは言いません。

そして、Gewinde と Schraube はどちらも辞書では「ねじ」なので、違いがあるのかないのかよく分かりません。

この混乱を解く素晴らしい定義を最近見つけました。 曰く、Unter einer Schraube versteht man einen mit Kopf und Außengewinde versehenen Bolzen(「ねじ」とは、頭部と外側にねじ山(雄ねじ)のあるくさび・くぎのことである)。

つまり、Schraube とは一般人が理解するところの「ねじ」で、Gewinde は起伏がぐるぐるらせん状に回っている「ねじ山」のある部分を指していて、Bolzen はどこかに打ち付けることを目的とした棒状の物体を指していることになります。

このため、自分で切って使うねじは Schraube ではなくGewinde になります。長い棒状なので、die Gewindestange と呼ばれることが多いです。

雄ねじ die Außengewinde に対してナットなどの内側にあるギザギザ「雌ねじ」は die Innengewinde と言います。雄は「外」、雌は「内」なんですね。


日本語で「~ボルト」と言う場合、頭部があるものを指しているので、ドイツ語では -bolzen ではなく、-schraube となります。


ねじの部位

ねじは以下の部位から成ります。

駆動部 der Schraubenkopfantrieb: ドライバなどを差込むために空いている穴

頭部 der Schraubenkopf: その名の通り頭の部分

ねじ部 die Gewinde: ぎざぎざのある部分

先端部 die Schraubenspitze:その名の通り先端の大抵はとがっている部分

ねじは頭部の形状とねじ部の形状やサイズで大まかに分類され、数えきれないほどの種類があります。

ここではその分類に重要な部位の名称・寸法を挙げます。

1)頭部

頭部の輪郭 der Rand des Schraubenkopfes:丸 rund、六角 sechskantig、四角 verkantigなど。

座面 die Oberseite des Schraubenkopfes: 皿頭 eben、丸皿頭 eben-gerundet、バインド頭 kugelig、トラス頭 halbkugelig、なべ頭、チーズ kegelig

頭部高さ die Kopfhöhe

頭部外径 das Außenmaß

2)ねじ部



ピッチ die Steigung: 隣り合うねじ山同士の距離

呼び径 das Nenndurchmesser: 外径の基準寸法(M10はメートル法ねじで、直径(呼び径)が10㎜であることを意味する)

外径 das Außendurchmesser: ねじ山の最大直径

谷径 das Kerndurchmesser: ねじ山の谷径に接する仮想円の直径

有効径 das Flankendurchmesser: ねじ溝の幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想円の直径

フランク角 der Flankenwinkel: ねじ山突起の鋭角部の角度

基準山形 das Gewindeprofil:ねじ山の断面形

呼び長さ die Länge: 頭なしのねじ部と首があれば首を含めた長さ


ねじ回しに関する動詞

先述の eine Schraube anziehen「ねじを締める」には、mit einem Schraubendreher「ドライバーで」や mit einem Anzugsmoment (Anziehmoment) von … Nm 「~Nmの締め付けトルクで」を補足してねじ締めの動作を具体化することができます。また複数のねじを「対角締めにする」は、die Schrauben über Kreuz anziehen です。また、緩んだねじを「締め直す」は nachziehen。

締める強さの程度を表すのには、leicht「軽く」や fest「きつく」を使います。

また、具体的な物体を目的語にして、etwas schrauben「~をねじ止めする」ということもできます。

この schrauben(schraubte, geschraubt)という動詞には様々な派生語があり、ねじを回して何をするのかを表します。

abschrauben: 蓋などを回して外す。den Deckel abschrauben(蓋を回して外す)

anschrauben: モノをねじで固定する。ein Schild anschrauben(札をねじで固定する)

aufschrauben:1)ねじ状の蓋を回して容器を開ける。ein Marmeladenglas aufschrauben(ジャムのグラスを(蓋を回して)開ける)。 2)ねじ状に回して何かの蓋を閉める。den Deckel [auf das Glas] aufschrauben(蓋を[ガラスの上にのせて]回して閉める) (-> draufschrauben)。3)ねじでモノを何かの上に取り付ける。ein Namensschild [auf die Tür] aufschrauben(表札を[ドアに]ねじで取り付ける)

ausschrauben / herausschrauben: 何かの中にあるモノをねじ状に回して取り出す。eine Birne [aus der Fassung] ausschrauben(電球を[フレームから]回して取り出す)

draufschrauben: [口語]ねじ状に回して何かの蓋を閉める。(-> aufschrauben 2))

einschrauben: モノを何かの中にねじ入れる、回しながら入れる。eine Glühlampe [in die Fassung] einschrauben(白熱電球を[フレームの中に]回して入れる)

festschrauben: モノを固くねじ止めして固定する。einen Kleiderhaken [an der Wand] festschrauben(コート掛けのフックを[壁に]ねじでしっかり取り付ける)

losschrauben: abschrauben に同じ。den Griff losschrauben(ハンドルをねじを回して外す)

zuschrauben: ねじ状に回して何かを閉める。die Flasche zuschrauben(瓶の蓋を回して閉める)

zusammenschrauben: モノとモノをねじで連結する。 die beiden Platten zusammenschrauben(両方のプレートをねじで連結する)


aufschraubenが場合によって逆の意味になるのが難しいですが、それ以外は基本的に ab-, an-, aus-, zu-などの接頭辞の典型的な意味と schrauben の「ねじを回す」または「ねじのように回す」という意味を組み合わせて理解できるものです。


以上が、機械のマニュアルなどの翻訳を通じて得ることのできたねじに関する豆知識です。ねじそのものの特性や材料、製造法などはあまりに技術的すぎるので、本来「一般ビジネス」を得意分野とする翻訳家のところには依頼が来ませんし、たとえ来ても私には無理なのでお断りします。さすがにそこまで深入りする気力も能力もありませんし(笑)


また何か門前小僧でもある程度まとまって得られた豆知識があればご紹介したいと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました。





サイト会員になると無料メルマガ「Mikakoのドイツ語通信」とブログの更新情報の通知をお受け取りになれます。ぜひご登録ください!

閲覧数:586回0件のコメント
bottom of page