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特殊な完了形「代替不定詞(Ersatzinfinitiv)」

更新日:2021年11月14日

現在完了(Perfekt)と過去完了(Plusquamperfekt)は助動詞の haben あるいは sein と本動詞の過去分詞(Partizip II)で形成されます。haben と sein の使い分けについては別稿「Perfekt mit haben oder sein? 現在完了の助動詞について」をご覧になってください。

しかし、これには例外があります。いわゆる話法の助動詞(Modalverben)と brauchen および知覚動詞が、他の動詞の不定詞を伴う場合、過去分詞ではなく不定詞で代用されます。このような不定詞は代替不定詞(Ersatzinfinitiv)と呼ばれますが、まあ、文法的な名称は忘れてしまっても構いません。

以下が完了形に代替不定詞を使う助動詞と動詞です。出典は、deutschplus.net, Besondere Art der Perfektbildung: Der Ersatzinfinitivです。


1. dürfen, können, mögen, müssen, sollen, wollen このグループは完了形において代替不定詞を使わなくてはいけません。

2. brauchen も 1.と同様に代替不定詞が必須です。

3. lassen, sehen, hören では代替不定詞が使われる頻度が高いですが、過去分詞が使用される場合もあります。

4. heißen, machen, helfen, lehren, lernen, fühlen, spüren では基本的に過去分詞が使われますが、稀に代替不定詞が使われることがあります。


直接法現在完了・過去完了の例文

分かりやすいように助動詞、不定詞、代替不定詞は色分けしてあります。

  • Ich habe sofort nach Hause gehen müssen. 私はすぐに帰宅しなければならなかった。

  • Wir haben im Warteraum nicht rauchen dürfen. 私たちは待合室で喫煙してはいけなかった。

  • Sie hatte ihre Großeltern besuchen wollen. 彼女は祖父母を訪ねたかった。

  • Er hat das Buch lesen sollen. 彼はその本を読むべきだった。

  • Er hat nicht nochmal zu kommen brauchen. 彼は再度来る必要はなかった。

  • Sie hatte die Prüfung nicht zu wiederholen brauchen. 彼女は試験の追試を受ける必要はなかった。

  • Ich habe mich von meiner Frau scheiden lassen. 私は妻と離婚しました(ドイツでは離婚をするには裁判所の判決が必要であるため、「自分を離婚させる」のように使役動詞を使います)。

  • Sie hatte ihre Enkelin tanzen sehen. 彼女は孫が踊るのを見た。

  • Wir haben die Nachbarn laut singen hören. 私たちは隣の人たちが大声で歌うのを聞いた。


話法の助動詞の現在完了形はほとんど使われることがありません。大抵の場合はただの過去形が使われます。ドイツ語では過去形と現在完了形に英語のようなはっきりとした用法の区別がありませんので、形が簡単な過去形(durfte, konnte, mochte, musste, sollte, wollte)の方が好んで使われるわけです。

しかしながらこの現在完了形をベースに仮定法過去(Konjunktiv II)が形成されるので、体系的な必要性から文法書に記載されています。


仮定法過去の例

  • Ich hätte sofort nach Hause gehen müssen. 私は本当はすぐに帰宅しなければならなかったのだが(実際にはそうしなかった)。

  • Wir hätten im Warteraum nicht rauchen dürfen. 私たちは本来なら待合室で喫煙してはいなかったのだが(実際には喫煙した)。

  • Sie hätte ihre Großeltern besuchen wollen. 彼女は本来なら祖父母を訪問することを望んだのだが(実際には望まなかった)。


仮定法過去は口語でも頻繁に使われますので、ネイティブと自由にドイツ語会話ができるようになるためには、こういう用法もきちんと覚えざるを得ません。


副文での語順

代替不定詞が使用される場合は、副文における語順にも注意が必要です。通常であれば人称・時制変化形の(助)動詞が文末に来ますが、代替不定詞の場合は haben の変化形が不定詞を伴う動詞句の先頭に来ます。

例:Die Lehrerin hat ihn kritisiert, dass er das Buch hätte lesen sollen. 彼はその本を読むべきだったのに、と先生(女性)は彼を批判した。

参考:Die Lehrerin hat ihn kritisiert, dass er das Buch nicht gelesen hatte. 彼がその本を読まなかったと先生(女性)は彼を批判した。



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