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「es」はいるの?いらないの?

更新日:2020年1月14日

中性の代名詞である「es」はややこしい問題で、簡単な規則は残念ながらありません。「es」の用法を詳細に研究する博士論文があるくらいですので、もし、あなたが「es」に関する「簡単な」規則を覚えているとすれば、それが間違いである場面が相当に多いはずです。特に「「es」を省略できる」規則の場合、おおむね間違って運用していると考えた方がいいでしょう。 私自身の反省も含めて、日本人が書いたり話したりするドイツ語にはこの「es」が必要なのに抜けていることが圧倒的に多いです。😱 なので、ここでは「es」が絶対に必要なところと、「es」を使ってはいけないところを紹介したいと思います。 この必須規則と禁止規則をきちんと押さえていれば、あとはどっちでもいいわけですから省エネ原理に則って省略してしまって構わないわけですが、簡単なことではありません。というのは、それには実はドイツ語の結構深い文法的分析力・理解力が必要になることがあるからです。このため、私の個人的な意見としては禁止規則のみをきっちりと抑えて、あとは基本的に「es」を使う方をお勧めします。こうすることで、深い文法的分析をすることなく正しくドイツ語を運用できるようになります。会話としては少々堅い印象を与えてしまうこともあるかもしれませんが、必要なところで間違って省略してしまうよりはましです。 というわけで、まずは禁止規則をご紹介します。(参考リンク:http://canoonet.eu/services/OnlineGrammar/InflectionRules/FRegeln-P/Pron-es.html 「es」を使ってはいけないとき 1)「es」が先述の中性名詞を受けており、目的語(4格、Akkusativ)である場合、文頭では使ってはいけません。  Das ist ein schönes Hemd. – Ich habe es gestern gekauft. / Das habe ich gestern gekauft.(それ、素敵なシャツだね。-(私は)(それを)昨日買ったんだ。/これは昨日買ったんだ。) Es habe ich gestern gekauft.  Ich rauche nicht mehr. Ich habe es aufgegeben. / Das habe ich aufgegeben.(私はタバコはもう吸ってません。(私は)(それを)止めました。/それは(吸うのは)止めました。) Es habe ich aufgegeben. 2)「es」が先述の述語 Prädikat を受けている場合、文頭では使ってはいけません。  Ihr seid erschöpft. – Wir sind es auch. / Das sind wir auch.(君たちは疲れているね。-(私たちは)そうなんだよ。/それなんだよ。) Es sind wir auch.

3)「es」が先述の中性名詞を受けており、前置詞の後に来る場合。  Das ist mein Haus. Ich bin sehr stolz darauf.(これが私の家です。私はそれをとても自慢にしています。)  Ich bin sehr stolz auf es.  Er hat ein Problem, aber er spricht nicht gern darüber.(彼は問題があってもそれについて話したがらない。)  ..., aber er spricht nicht gern über es. 「es」で受けるべき中性名詞が人間・生き物である場合は、上のように前置詞との融合形を作ることができないため、名詞を繰り返すか、別の単語に言い換えます。  Er zeigte ein Foto seines Kindes. Er ist sehr stolz auf das Kind/auf seine Tochter/auf seinen Sohn.(彼は彼の子供の写真を見せた。彼は子供/娘/息子を誇らしく思っている。)  ..., Er ist sehr stolz auf es. 4)zu を伴う不定詞や dass で導かれる副文を指す相関詞 Korrelat としての「es」は副文が先行する場合は使ってはいけません。代わりに das を使うのは可。 Dass das Restaurant geschlossen ist, (das) bedauern wir sehr.(あのレストランが閉店したのは、(このことを)大変残念に思っています。)  ..., es bedauern wir sehr. Sie enttäuschen zu müssen, (das) bedauern wir sehr.(あなたのご希望に添えなくて、(このことを)大変残念に思っています。)  ..., es bedauern wir sehr. Dass sie ihn verlassen hat, (das) begreift er nicht.(彼女が彼を捨てたということを(それを)彼は分かっていない。)  ..., es begreift er nicht. 5)zu を伴う不定詞や dass で導かれる副文を指す相関詞としての「es」は前置詞の後では使ってはいけません。darauf、darüber などの融合形を使用します(3)と同じ原理です)。  Ich freue mich darüber, dass ihr gekommen seid.(君たちが来てくれてうれしいよ。)  Ich freue mich über es, dass ihr gekommen seid.  Denk daran, die Pflanzen zu bewässern!(植物に水をやるの忘れるなよ!)  Denk an es, die Pflanzen zu bewässern!

以上が禁止規則ですが、いかがですか?これ以外の場合に「es」を省略してしまうと間違いである可能性がかなり高くなります。確率としては60~70%は間違えているのではないでしょうか。 なのでもう一度以下に紹介する必須規則を確認してみてください。(参考リンク:http://canoonet.eu/services/OnlineGrammar/InflectionRules/FRegeln-P/Pron-es.html +  https://www.deutschakademie.de/online-deutschkurs/forum/index.php/topic,62.msg158.html#msg158 +  https://mein-deutschbuch.de/pronomen-es.html 「es」が絶対に必要なとき 6)先行する中性名詞を受ける人称代名詞の「es」で、主語(1格、Nominativ)または文頭ではない目的語(4格、Akkusativ)。 Wo ist das Telefon? Es steht auf dem Tisch.(電話はどこですか? それは机の上です。) Kauf dieses Hemd! Es wird ihm bestimmt gefallen. Kauf es!(このシャツを買いなよ。それはきっと彼の気に入るよ。それを買いなって!) ここで、「え?でも、「Steht auf dem Tisch.」って言ってない?」と思った方は、よく気が付いたとほめてあげましょう😃 ここで主語としての人称代名詞「es」を抜かしてしまうのは、許容されている口語ルールです。しかし、書き言葉あるいはそれに近いスピーチなどでは省略は許容されておらず、「間違い」とみなされます。 7)形容詞または中性ではない名詞を受ける述語としての「es」。動詞の人称変化は「es」ではなく、主語の人称・数に従います。 Sie ist Ärztin und ihre Tochter wird es auch.(彼女は医者で、彼女の娘もそうなる予定です。) Sie ist Ärztin und ihre Töchter wollen es auch werden.(彼女は医者で、彼女の娘たちもそうなるつもりでいます。) Ihr seid sicher erschöpft. ー Wir sind es auch.(君たちはきっと疲れているだろう。ー(私たちは)そうなんだよ。) 8)中性でなく、往々にして単数でもない名詞を受ける主語としての「es」。動詞 sein の人称変化は述語の人称・数に従います。 Was ist das? Es ist eine moderne Designlampe.(これは何ですか?モダンなデザインランプ(単数)です。) Drei Männer betraten das Lokal. Es waren Polizisten.(男3人が飲み屋に入ってきた。それは警察官たち(複数)だった。) 9)先述の zu + 不定詞または文全体を受けた目的語としての「es」 Ich rauche nicht mehr. Ich habe es (= das Rauchen) aufgegeben.(タバコはもう吸いません。それ(=喫煙)はやめたんです。) Hat er dich ausgescholten? Du wirst es wohl verdient haben.(彼は君を叱り飛ばしたのかい?君がそれだけのことをしたんだろう。) 10)文頭で、後続の zu + 不定詞や副文を指す相関詞としての「es」 Es freut uns, dass unsere Mannschaft gewonnen hat.(私たちのチームが勝ってうれしいです。) Es fällt mir schwer, ihm seine Lügen zu verzeihen.(私には彼のついた嘘を許すのは難しい。) Es ist erstaunlich, dass ihr gekommen seid.(君たちが来たのは驚きだ。) ここで、「え?「Freut uns, dass ..」って言ってない?」と思った方もいるかと思います。はい。その通りです。😅 6)ですでに述べたように、ここで文頭の「es」を省略してしまうのも口語ルールです。書き言葉あるいはそれに近いスピーチなどでは省略は許容されておらず、「間違い」とみなされます。 参考までに、文頭にない相関詞はあってもなくてもいいことになっています。 Natürlich freut (es) uns, dass unsere Mannschaft gewonnen hat.(もちろん私たちのチームが勝ったのは嬉しい。) これは相関詞としての「es」が目的語である場合も同様です。 Wir bedauern (es) sehr, Sie enttäuschen zu müssen.(あなたのご希望に添えなくて、とても残念です。) 11)Platzhalter-es/Stilistisches es ダミーの「es」/形式的な「es」と呼ばれる指示する対象がないが、文頭の「es」。文中に来る実際の主語がこれによって強調されます。 Es steht ein Schrank im Gang.(クローゼットが通路にあります。)ー強調されない通常語順は、Ein Schrank steht im Gang. Es wartet jemand auf Sie.(誰かがあなたを待っています。)ー強調されない通常語順は、Jemand wartet auf Sie. Es strahlten die Sterne am Himmel.(星々が空に輝いていた。)ー強調されない通常語順は、Die Sterne strahlten am Himmel. あくまでもダミーであって本来の文の構成要素ではないので、文頭以外では使われません。文中で「省略」されているわけではありません。もともとないのです。ただ文の焦点をずらすために語順を入れ替える場合に、動詞から文を開始することが通常はできないために文頭にこのダミーを置くわけです。その意味で、人称代名詞や相関詞としての「es」とは根本的に違う性質を持っていると言えます。 12)受動態の形式的主語として文頭に来るダミーの「es」 Es wurden viele Exemplare gestohlen.(何部も盗まれた。)ー強調されない通常語順は、Viele Exemplare wurden gestohlen. Es wird den Schülern geholfen.(生徒たちにはサポートが与えられる。)ー強調されない通常語順は、Den Schülern wird geholfen.この場合、文法上の主語はありません。意味上の主語は「Die Schüler」なのですが。 Es wurde getanzt und gesungen.(踊りや歌があった。)ーこれは非人称で行為のみを表す受動態のため、前述の例のような単純な語順変更はできません。 13)天候・音・体調・感覚などを表す非人称動詞の主語 【天候】 Es regnet stark. / Stark regnet es.(大雨が降っている、雨が激しく振っている。) Es schneit schon den ganzen Tag. / Den ganzen Tag schon schneit es.(もう一日中雪が降っている。) Bei dem gestrigen Gewitter hat es geblitzt und gedonnert.(昨日の嵐では稲妻が光り、雷が鳴った。) Dabei hat es in Strömen geschüttet.(そのとき、土砂降りだった。) Es ist warm heute. / Heute ist es warm.(今日は暖かい。) その他 blitzen, dämmern, donnern, frieren, gewittern, gießen, hageln, nieseln, scheinen, tauen, tröpfeln などの非人称動詞。 【時間】 Wie viel Uhr ist es jetzt? - Es ist schon spät, es ist schon 18 Uhr durch.(今何時?-もう遅いよ、もう18時過ぎだ。) Es dämmert schon. Es geht gleich die Sonne auf.(もう明るくなってきた。もうすぐ日の出だ。) Es ist gleich Feierabend. / Gleich ist es Feierabend.(間もなく終業だ。) Es ist noch früh. (まだ早い。) Noch ist es zu früh.(まだ早すぎる。) 【音】 Kannst du bitte mal die Tür öffnen? Es hat jemand an der Tür geklopft.(ちょっとドアを開けてくれない?誰かがドアをノックしたから。) In alten Häusern knarrt und knirscht es in allen Ecken.(古い家では至る所でガタピシいう。) その他 blasen, klingeln, klopfen, knacken, knarren, knirschen, krachen, läuten, pfeifen, rascheln, rauschen, scheppern, summen などの非人称動詞。 【体調・感覚】 Wie geht es dir? (どうだい?元気かい?) Mir geht es gut.(私は元気です/元気だよ。) Schmeckt es dir? - Natürlich schmeckt es mir.(美味しい?-もちろん、美味しいよ。) その他 brennen, duften, gut / schlecht gehen, gefallen, jucken, kalt sein, kratzen, kribbeln, riechen, schmecken, stinken, warm sein などの非人称動詞。 ただし、grauen, grausen, gruseln, schaudern は非人称的な用法(es graut mir, es graust mir, es gruselt mir, es schaudert mich)でも文中の場合は「es」は必須ではありません。これらはあくまでも例外ですので、一般化しないように気を付けてください。 【トピック・重要な事柄を表す】 Es handelt sich um ein Missverständnis. (それは誤解です。) Handelt es sich um ein Missverständnis?(それは誤解ではないですか?) Ich muss mit Ihnen sprechen - Worum geht es? - Es geht um den Mietvertrag.(あなたに話があります。-何の話ですか?ー賃貸契約についてです。) Es gibt nicht wenige Frauen, die klüger sind als die klügsten Männer.(最も頭のいい男性よりさらに頭のいい女性が少なくなからずいる。) その他、es dreht sich um, es heißt, es kommt darauf an, es scheint などの慣用句。 14)慣用句の型式的な目的語。 Viele Leute haben es immer sehr eilig.(いつも非常に急いでいる人が多い。) Er hat es im Leben weit gebracht.(彼は人生でずいぶん成功した。) Ich meine es doch nur gut mit dir.(君に良かれと思って言ってるだけなんだよ。) Diese Aufgabe hat es in sich.(この課題は思いのほか難しい。) Er hat es auf mich abgesehen.(彼は私を望んだ。) Im Urlaub lasse ich es mir gut gehen.(バカンスではのんびりする(自分に良いことをする。)) Ich lasse es darauf ankommen.(私はその危険を覚悟している、その危険を冒すつもりだ。) Der Roman hat es mir so angetan.(その小説が私はとても気に入った。) いかがですか?「es」を抜かして言っていることが多くないですか?私個人は13)の習得が一番遅かったように思います。慣用句の中の意味のある単語のつながりを覚えるのに必死で、そこに「es」も属しているとなかなか自覚できなかった覚えがあります。😅  書き言葉ではなく、話している場合だと「es」がただの「's」になってしまっていて、辞書で調べずに耳で覚えた慣用句だと聞き取れてないことが多かったです。

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