【学問の自由】シュタインマイヤー独大統領ボン大学創立200周年記念式典式辞を原文で読もう(1)

最終更新: 6日前

ドイツの政治家はよく「学問の自由」に言及します。何らかの圧力を受けた学者が言うのではなく、政治家がそれを言うのが現代ドイツの精神性、ナチスの過ちを二度と繰り返すまい、民主主義を守ろうという姿勢の表れと言えます。その一例として、先日(2020年10月7日)、朝日新聞社の言論サイトである「論座」に掲載された林正彦氏(天文学者、日本学術振興会ボン研究連絡センター長)の記事「政治家が「学問の自由」を諭すドイツ ドイツに住んでわかった西欧と日本の価値観の根本的な違い」で引用されていた、2018年のシュタインマイヤー独大統領ボン大学創立200周年記念式典式辞を原文で読んでみるのは有意義なのではないかと思い、新シリーズをスタートすることにしました。ボン大学は私の母校でもあるので、感慨深いです。



本当は、ささっと一気に翻訳してしまおうかと思ったのですが、スピーチ原稿はPDFファイルで10ページ、約3800語に及ぶため、時間的に無理だと判断しました。Facebookのドイツ語グループの共同管理者さんからのご提案により、みんなで少しずつ原文を見ていくシリーズとすることにしました。

以前、ミヒャエル・エンデの「Die unendliche Geschichte ネバーエンディング・ストーリー」をシリーズで少しずつ解説を加えながら翻訳をしていったことがありますが、今回も同様にやっていきたいと思います。

【原文】

Zweihundert Jahre Rheinische Friedrich-Wilhelms-Universität Bonn – was für ein Fest!

Ich muss zugeben, vor drei Wochen, am 27. September, da habe ich kurz Zweifel bekommen, ob ich heute tatsächlich hierherkommen kann. Einige von Ihnen haben es vermutlich mitgekriegt. Am 27. September wurde bekannt, dass die Uni Bonn die mit Abstand erfolgreichste Hochschule in der aktuellen Exzellenzrunde ist. Nicht zwei, drei oder vier, sondern ganze sechs Cluster kommen an den Rhein – was für ein Coup!

Und da der Bundespräsident sich bekanntermaßen überparteilich zu verhalten hat, war ich mir auf einmal nicht mehr ganz so sicher, ob mein heutiger Auftritt nicht andernorts als Parteinahme gesehen würde. Zum Beispiel 30 Kilometer flussabwärts, da am Dom. Der Erzbischof hat heute Morgen im Gottesdienst bereits alle Sensibilitäten schonungslos offen gelegt.

Aber: Zu meinem Glück und Ihrer Zuhörerfreude war ich in der gleichen Woche beim großen Kongress der deutschen Politikwissenschaft an der Universität in Frankfurt am Main. Die haben mir nach eingehender Prüfung versichert: "Das geht schon in Ordnung. Sie können ruhig nach Bonn fahren, die haben sich das verdient." Mit solcher Art Ermutigung bin ich hier. Nun denn!


【解説】

Rheinische Friedrich-Wilhelms-Universität Bonn ボン大学の正式名称。ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン

mitgekriegt mitkriegen(口語)の過去分詞。小耳にはさむ、噂に聞くなど何らかの間接的な形で知る

die Exzellenzrunde ドイツ連邦教育研究省の Exzellenzstrategie エクセレント戦略に基づき、助成対象クラスターに各大学が応募して競合し、選ばれた大学が助成金を受ける制度。Exzellenzrunde とはこのコンテストのこと。

kommen an den Rhein 字義通りには「ライン川に来る」ですが、den Rhein はここではボン大学 Uni Bonn の換喩です。

überparteilich 超党派の(形容詞)、超党派的に(副詞)

die Parteinahme 味方〔すること〕

flussabwärts 川を下って。ライン川を指しています。

am Dom ケルン大聖堂 Kölner Dom を指しています。

Sensibilitäten 通常 Sensibilität は、「感受性・感度」を意味しますが、ここは複数形で「微妙な、デリケートな問題」を指しています。

schonungslos あからさまに〈歯に衣を着せず〉

Zu meinem Glück und Ihrer Zuhörerfreude 私にとって幸運、みなさまの聞き手として喜ばしいことに。Zuhörerfreude はあまり普通の言い方ではありませんが、Zuhörer(聞き手、聴衆)と Freude(喜び)の造語で、zu jemandes Freude で「~にとって嬉しいことに」を意味します。

Kongress der deutschen Politikwissenschaft DVPW (Deutsche Vereinigung für Politikwissenschaft ドイツ政治学協会)主催の学術会議。2018年は「Grenzen der Demokratie / Frontiers of Democracy」がテーマでした。



【翻訳】

ライン・フリートリヒ・ヴィルヘルム・ボン大学200周年、なんと素晴らしい祝典でしょう!

実は、今日本当にここに来れるのかどうか、3週間前の9月27日に少々疑念を抱きました。もしかしたらここにいらっしゃる方の何人かはそのことをうわさなどで聞いたかもしれません。9月27日に、ボン大学が今回のエクセレントコンテストで他に大きく差をつけて最優秀大学であることが公表されました。2つ3つあるいは4つどころではなく、6つのクラスター助成金がライン川沿いのボン大学に来ることになったのです。素晴らしい功績ですね!

それで、連邦大統領というのは、皆さんご存知のように、その振る舞いは超党派的であることが求められていますので、今日この場に出席すると、他のところからひいきのように見られるのではないかと急に心配になってしまったのです。例えば、ライン川を下って30㎞のところにあるケルン大聖堂でのことですが、ケルン大司教は今朝のミサですでにあらゆる微妙な問題を歯に衣着せず明らかにしました。

しかしながら、私にとって幸いなことに、またあなた方聞き手にとって喜ばしいことに、同じ週にフランクフルトアムマイン大学でドイツ政治学協会主催の学術会議に出席する機会があり、そこで詳細な検討の末、次のような保証を頂きました。「それ(ボン大学200周年式典への出席)は問題ありません。ボンへ行ってもご心配することはありませんよ。ボン大学の人たちは大統領の出席に値するだけの功績をあげました。」このように勇気づけられて私は今ここに立っているのです。では、本題に移りましょう。





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