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【書籍紹介】ハンナ・アーレント - 全体主義の起源

更新日:2021年9月4日


貧富の格差の拡大、抑制のない資本主義が次々に起こす金融・経済危機、取り残される人たちの増加、排他主義の台頭、右傾化の増大、それに伴う国際協力の相対的意味の喪失と自国優先主義の増長など、今、世の中は不穏な空気に満ちています。

ハンナ・アーレントの『全体主義の起源 Elemente und Ursprünge totaler Herrschaft』はナチスの追跡を逃れてフランス経由で渡米した著者が1951年にまず英語(The Origins of Totalitarianism)で発表した、全体主義研究の画期的な著作です。1955年にドイツ語版が発行されました。かなり重いテーマで、1000ページを超える重い本ですが、現代の世相にも適用できるので、Blinkistという本の要約をオーディオで聞けるドイツ語アプリでも紹介されています。

なぜ本書が現代でも意味があるのかと言えば、本書がただのナチス批判ではなく、全体主義が広く受容される社会心理的な基盤についても深く考察しているからです。


本書は3部構成で、1部「反ユダヤ主義 Antisemitismus」17-272、2部「帝国主義 Imperialismus」273-626、3部「全体主義 Totale Herrschaft」627-979となっています。参考文献リストと人物索引を含めて1015ページ、厚み6㎝はかなりの存在感です。ずいぶん前から私の本棚に鎮座しているのですが、なかなかじっくりと読破する時間が取れないままです。読破はしてませんが、要点だけご紹介します。


要旨:

社会は、あまりにも多くの人が社会から疎外されていると感じ、その反動として民主主義的な価値観に背を向けるとき、全体主義的な勢力による簡単で分かりやすい公約に引っかかりやすくなる。そうすると全体主義的主導者が宿敵の像を描き、「原子化」した人々を共通の敵に対する戦いの中で1つの全体にまとめる。指導者らは、人々を従順なロボットにし、自己の権力を拡大するためにプロパガンダと暴力を使う。これらすべてを阻止するには、自らの意思決定の自由に責任をもって向き合い、自らの行いの結果を十分に吟味する必要がある。



 




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