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色彩豊かに話そう!3 Rot 赤

更新日:2020年1月14日

今回は「Rot 赤」を使った表現を紹介します。

Der rote Faden 「赤い糸」は「運命の赤い糸」ではなく、「 (一貫して流れる)主題、主要モチーフ」のことです。この表現はイギリス海軍が見つけやすいように船索に赤い糸を編み込む慣習から来たと言われています。ゲーテの『Die Wahlverwandtschaften 親和力』の第2部で比喩として用いられたのが始まりのようです。

Der durchgehende <rote Faden> im Tauwerk wird hier verglichen mit dem immer wiederkehrenden Motiv in Ottlilies Tagebuch.(船索に通された「赤い糸」はここではオットリリーの日記に繰り返し登場するモチーフにたとえられている。)

Das zieht sich durch wie ein roter Faden. 赤い糸のように一貫している、繰り返される。→「間違いが正されないまま繰り返し使われている」を意味することもあります。

このように wie の後に来る場合は不定冠詞 ein を使います。


Das ist [wie] ein rotes Tuch für mich. それは私にとって赤い布のようなものだ。

「赤い布」はこの場合憤慨の対象、怒りの原因などを指します。スペインの闘牛で牛を興奮させるために赤い布を振り回すことから来ています。


同じく闘牛から来ている分離動詞があります。

rotsehen (赤い布で興奮した闘牛の牛のように)かっとなる、腹を立てる。

ただし、das Rotsehen という名詞は「赤視症(Erythropsie) 」という視覚障害を表す医学用語です。


rot werden 赤くなる。恥ずかしさなどで顔色が赤くなるという生理現象を表しているので、日本語でも同じ表現です。

rot wie eine Tomate werden トマトのように赤くなる。

「真っ赤になる」という意味の比喩です。(https://www.phraseo.de/phrase/3992591/ 参照)

この比ゆも日本語で使っても問題なさそうですね。日本では「リンゴのように赤い」のほうが一般的ですが。


sich die Augen rot weinen 目が赤くなるまで泣く→大泣きする。

これも一種の生理現象なので、日本語にそのまま訳しても違和感がありませんね。


rot wie ein Krebs ザリガニのように赤い。

日焼けで肌が赤くなることを指す比ゆです。


Nach drei Stunden in der Sonne war er rot wie ein Krebs. 彼は3時間炎天下で過ごした後ザリガニのように赤く日焼けした。


rote Ohren 「赤い耳」は平手打ち(Ohrfeige)で耳のあたりが赤くなることから「平手打ち」またはそれに類似する攻撃を意味します。ぶたれれば熱を持つことから heiße Ohren「熱い耳」とも言います。


Du kriegst gleich einen Satz rote Ohren! お前は今に赤い耳をワンセット受ける→ぶん殴るぞ!

Der Kerl kann sich einen Satz rote Ohren abholen! あいつはできればぶん殴ってやりたい!

Es gibt gleich rote Ohren! ぶん殴るぞ!

mit roten Ohren abziehen 耳を赤くして引き下がる→すごすごと(恥じ入って)退散する。

この場合の「赤い耳」は恥じ入った時に顔や耳が赤くなる生理現象から来ています。

(Duden Band 11, Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten, 1992年発行~「Ohr」の項参照)


die rote Karte zeigen レッドカードを提示する。

サッカーの審判が退場処分を言い渡す時に提示するレッドカードから来ています。(http://www.farbenundleben.de/kultur/redewendungen_rot.htm 参照)


簿記で出費を赤で書き、収入との差額がマイナスであれば赤で記すことから来ている表現がいくつかあります。

rote Zahlen schreiben 赤い数字を書く→赤字を出す

in die roten Zahlen kommen/geraten 赤字になる

in den roten Zahlen sein 赤字である

aus den roten Zahlen herauskommen 赤字から抜け出す

日本語では数字ではなくただの「字」を使って赤字・黒字と言いますが、ドイツ語では rote Zahlen/schwarze Zahlen と数字 Zahl の複数形を使います。


簿記以外にも何かの修正には赤ペンを使うことが一般的です(でした)が、特に出費項目リストに赤ペンを入れてコスト削減を目指すことから次の2つの言い回しがよく使われます。

den Rotstift ansetzen 赤ペンを入れる→節約する

dem Rotstift zum Opfer fallen 赤ペンの犠牲になる→削減の対象になる。

(Duden Band 11, Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten, 1992年発行~「Rotstift」の項参照)


den roten Teppich ausrollen 赤いじゅうたんを広げる→賓客のように丁重に迎える、大いに歓迎する。

赤い色は中世ではじゅうたんに限らず王侯貴族やキリスト教会の司教のものとされていました。というのは赤い色が貴重なアクキガイ科の貝類 Purpurschnecke(ヨーロッパチヂミボラ・テツボラなど)を原料としたため、とても高価なものだったからです。戦争・紛争の後で、敗者が戦勝者に対して恭順と敬意を表すために赤いマントを足元に広げる風習がありましたが、いつしかマントがじゅうたんに代わり(古代ギリシャの神様の通るところに赤いじゅうたんを敷く風習が混じった可能性もあります)、重要な式典において王侯貴族が通るところに敷いてその重要性を強調するようになりました。現代ではスターのアカデミー賞授賞式のような式典や外国の国家元首の来訪を受ける式典などにこの風習が受け継がれています。

そうした式典の式次第を言う場合は言葉通りの意味ですが、実際に赤いじゅうたんが広げられなくても比ゆ的にこの表現を使います。


jemandem den roten Hahn auf das Dach setzen (人)の屋根の上に赤い雄鶏を置く→(人)の家に放火する。

これはいまでは使われなくなった表現です。「赤い雄鶏」は燃え盛る火のたとえ。

(Duden Band 11, Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten, 1992年発行~「Hahn」の項参照)



keinen roten Heller / nicht einen roten Heller 赤い1ヘラーもない→何もない。

ヘラーとは昔のドイツの小額銅貨・銀貨で、約 1/2 Pfennigに相当しました。現在の通貨では約 1/4 Cent になりますね。オーストリアでは1924年まで通用していたそうです。いずれにせよ小銭です。「赤いヘラー」は銅貨を表します。

Das ist keinen roten Heller wert. それは何の価値もない。

Er hat keinen roten Heller mehr. 彼は無一文だ。

für etwas/jemanden keinen roten Heller geben あること/人のために赤い1ヘラーも出さない→何の可能性も見えない、最悪の場合を予想する。

(Duden Band 11, Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten, 1992年発行~「Heller」の項参照)


sich etwas rot im Kalender anstreichen カレンダーに何かを赤く塗る→ある日を特別な日として記憶する。

日本でも特別な日をカレンダーに赤丸で囲ったりすることもあるので、特に説明は必要ないかと思います。実際に赤い印をつけなくても比ゆ的に「特別な日を記憶する」という意味で使われます。結婚記念日や大切な人の誕生日などが典型的な例でしょうね。😊

(Duden Band 11, Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten, 1992年発行~「Kalender」の項参照)


Salz und Brot macht Wangen rot. 塩とパンは頬を赤くする→粗食は健康のもと。

Brot と rot が脚韻を踏んでいます。赤い頬っぺたは健康の象徴と見なされていることからこの表現が来ています。

(Duden Band 11, Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten, 1992年発行~「Salz」の項参照)


信号機の赤は言うまでもなく「止まれ」を指示するものですが、車に乗っているときに赤信号が続くと非常に不愉快ですよね。こういう状況を

in die rote Welle geraten 「赤い波」と言います。


このほか、Rot 「赤」は社会主義・共産主義のシンボルカラーであるため、die Roten はSPD党員または Linke 左派政党党員を指します。定冠詞抜きの Roter/Rote であれば不特定の社会主義者・共産主義者を意味します。言葉通りには「赤い人」ですが、日本語の「アカ」のような否定的・差別的な意味はなく、単に政党のシンボルカラーを取っているだけです。ドイツの主要政党に関しては別稿「Deutsche Parteien ドイツの政党」をご覧ください。


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