今回は、そもそもドイツ語はどういう言語なのか、また、ドイツ語を学ぶメリットは何かということについてお話しします。
ドイツ語ってそもそもどういう言語?
ゲルマン語派
ドイツ語は英語と同じゲルマン語派に属しており、英語に似た言語です。
そもそも「ゲルマン語派」とは、インドヨーロッパ語族という大きなファミリーに属する言語グループです。現在インドヨーロッパ語族の言語が使われている地域をグループごとに色分けして示した以下の地図をご覧ください。この地図上で赤くマークされている部分がゲルマン語派の言語で、英語、オランダ語、ドイツ語のほか、アイスランド語や北欧のデンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語がこのグループに属しています。
成立過程
紀元前5世紀に、インドヨーロッパ語族からゲルマン語派が分離。第一次音韻推移と呼ばれる子音のシフト(pater -> father/Vater; lat. decem/gr. deka -> ten)によってゲルマン語派が他のインドヨーロッパ語族の言語から区別されます。
紀元後600年頃に、西ゲルマン語派から古期高地ドイツ語が分離。第二次音韻推移と呼ばれる子音のシフト(ship -> Schiff, pepper -> Pfeffer, eat -> essen, day -> Tag, brother -> Bruder)によって高地ドイツ語が他のゲルマン語から区別されます。
一方でこの子音シフトをしなかった低地ドイツ語も並行して存在し、現在のドイツ北部方言のベースになっています。
1350年頃から高地ドイツ語と低地ドイツ語の融合が始まり、その流れを受けて1522年に宗教改革者であるマルティン・ルターが聖書をギリシャ語からこの融合した共通ドイツ語に翻訳したことで、書き言葉としての現代ドイツ語の基礎を築いたと言われています。
ドイツ語の特性
ドイツ語の特性としてよく以下のものが挙げられます。
名詞の性が男性・女性・中性の3つある
定冠詞や形容詞に格変化がある
動詞に人称変化がある。
しかし、これらの特性は実はドイツ語独自のものではなく、本来インドヨーロッパ語族全般に共通する特性ですが、日本人の大部分が英語しか知らないので、その英語と違う点としてこうしたものがドイツ語の特徴として挙げられるわけです。逆に言えば、英語はこのような古式豊かなインドヨーロッパ語族の特性をほとんど失ってしまった言語であると言えます。
それ以外には、ドイツ語はスペルと発音の乖離が少なく、おおむね規則的であるため、慣れるとスペルだけで発音が予想できるという利点があります。しかし、外来語は例外ですので注意が必要になります。
ドイツ語話者・ドイツ語学習者数
ドイツ語を母語として話す人口は、9000万~1億500万人(欧州連合最大)。
ドイツ語を第二第三言語(生活言語)として話す人口は、8000万人(うち5500万人は欧州内)。
ドイツ語を外国語として話せる人口は、欧州内では英語に次ぐ第2位であり、ヨーロッパ人の約14%(7億4600万人の14%は1億4000万人)がドイツ語を話せます。
ゲーテインスティテュートの2017年の統計では、ドイツ国外のドイツ語学習者は1600万人。日本人のドイツ語学習者は5万人程度。
ドイツ語が使用される国・地域
公用語
ドイツ(8200万人)
オーストリア(890万人)
スイス(63%、500万人)
リヒテンシュタイン(約4万人)
ルクセンブルク(73%、約46万人)
準公用語
ベルギー東部(78000人)
イタリア・南チロル(51万人)
フランス・アルザス地方/ロレーヌ地方(120万人)
スロバキア(5100人母語話者)
ブラジル(2~5百万人ドイツ系、約90万人母語話者、ポルトガル語とのバイリンガル)
少数派言語として認定
ヨーロッパ
ルーマニア(4~5万人)
ポーランド(約6万人)~補助言語
デンマーク(2万人)
チェコ(4万1200人)
ハンガリー(20万人ドイツ系、約5万人母語話者)
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)~8000人
ウクライナ(3万3000人)
ロシア(約60万人)
アジア
トルコ(数世紀にわたってボスポロスドイツ人2万5000人)
カザフスタン(約17万8000人)
アフリカ
ナミビア(1990年まで公用語、2万人母語話者)
オーストラリア
オーストラリア(約7万8000人)
アメリカ
カナダ(43万8000人、多くがオンタリオ州に住むメノー派信徒)
USA(150万人、話されている言語第7位)
パラグアイ(16万6000人、ロシアから移住したメノー派信徒、USA・カナダ・メキシコからの移民)
ドイツ語を学ぶメリット
キャリア・ビジネス
ドイツはヨーロッパ最大の経済大国。2019年のGDPは3兆4400億ユーロ(約430兆円)、1人当たりGDPは、41,342ユーロ(約516万円)。
2017年度の1人当たりGDP世界ランキングでは第27位(50,800USD)で、日本は世界42位(42,900USD)。日本よりも一人当たりの生産性が高く、ヨーロッパ各国の人たちがドイツに出稼ぎができるように、または恒常的な職を求めてドイツ語を勉強します。EU外の出身者でもドイツ国内で人材不足になっている職種の資格があれば比較的簡単にビザが取れるので、日本人にもチャンスがあります。
お若い方なら、資格がなくてもワーホリでドイツで働くことができます。
大学が無償なため、留学で箔をつけようと思う方にはリーズナブルな留学先としてドイツはおすすめ。ただし、大学入学に必要なドイツ語レベルはかなり高いです。
ドイツ語ができる日本人はまだ少ないので、それほどハイレベルの語学力でなくてもドイツ語が必要とされる仕事に就けるチャンスが高く、ブルーオーシャン状態と言えます。
日本人の英語力の平均は低いものの、ハイレベルの英語を使える日本人は多数おり、英語を生かした職業での競合は激しいレッドオーシャン状態なので、これから英語力を鍛えて勝負に出るよりもドイツ語を学んだ方がおいしいかもしれません。
住む
ドイツ語圏駐在やドイツ語ネイティブのパートナーとドイツ語圏に住むなら、ドイツ語できた方が楽です。一応英語も通用するとはいえ、生活の様々な場面でドイツ語しか使われない場合があるので、ドイツ語ができた方が他人を頼らなくて済むでしょう。
旅行
旅行するには英語だけでも困りませんが、ドイツ語圏を旅行するときに挨拶など少しくらいドイツ語ができると、現地の人に好印象を与えることができ、サービスがよくなるかもしれません。
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人とのつながり
ドイツ語を母語とする人、第二第三言語として使用する人、外国語として話せる人は世界中で約3億3000万人おり、英語ほどではないにせよかなり大きな言語共同体です。ドイツ語ができれば、直接つながれるネットワークの可能性が広がります。
また、日本語を勉強しているドイツ語ネイティブとタンデムをするのは楽しいし、普段無意識に使っている日本語について新たな気づきが得られるでしょう。機会がありましたらトライしてみてください。
情報収集
ドイツ語はウエブサイトでの使用言語第3位(2013年W3Techs:英語55.4%、ロシア語6.1%、ドイツ語5.9%)なので、ドイツ語ができるとインターネット検索で、翻訳者や日本語での報道によるフィルターのない情報がより多く直接得られるようになります。
文化・思想
ドイツ語は「詩人と思想家の言語(die Sprache der Dichter und Denker)」と呼ばれています。特にドイツ人はそのことに誇りを持っています。
詩人で有名なのはゲーテ、シラー、ハイネなど。また、思想家・哲学者として有名なのはカント、ヘーゲル、ショーペンハウアー、マルクス、フッサール、ハイデガーなどでしょう。
児童文学では、エーリッヒケストナー、ミヒャエル・エンデ、オトフリート・プロイスラーなどが日本でも知られていると思います。
ドイツ語ができれば、このような作品を原文で読めるようになります。
私自身翻訳をしているので、原文の持つニュアンスや味わいを100%日本語に表現できるわけではないことを十分承知しています。特にジョークやダジャレなどはほとんど翻訳できません。なので、ドイツ語の文学や哲学などに興味を持っている方はぜひ原文を楽しめるようにドイツ語を学ぶべきだと思います。
クラシック音楽でも、ドイツ語の歌は日本でもよく知られてますが、文学同様、ドイツ語ができれば原詩の味わいをより深く堪能できることでしょう。
カッコイイ
ドイツ語は「ムダにかっこいい」と言われています。それを勉強しているだけでカッコイイと思われるかもしれません。できるようになったらもっとカッコイイですよ。
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目次
1:51 私のバックグラウンド
10:48 ドイツ語とは/インドヨーロッパ語族・ゲルマン語派
12:55 ドイツ語の成立過程
17:06 ドイツ語の特性
18:52 ドイツ語話者数
20:30 ドイツ語圏(公用語、準公用語、少数派言語)
24:20 外国語としてのドイツ語
25:46 ドイツ語を学ぶメリット
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